以前に訪問者様より教えて頂きました「りぼんちゃん」を読んで見ましたので話題に。
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あらすじなどから読み取れる通り大まかな内容は”転校生の理緒が抱える悩みや辛さを知った朱理が、理緒のために奔走するお話”・・・少女が少女の”心”を救う-具体的には問題を抱える父を持つ理緒を朱理が救う-お話です。
主人公が大切な人のために頑張るという”骨格”は普遍的なテーマであり、そういう意味では良くあるお話と言えます。ただ、本作の特徴かつ印象的なのは”心を救うお話”であること。
実際のところ、朱理の年齢設定が小学6年生という設定である事もあって理緒を颯爽と助ける、悪者を打ちのめすといった展開は有りません。
物語の結果として理緒は救われますが、それは朱理の家族=大人たちの助けが有ったればこそ。では、朱理は理緒のために役に立てなかったのかと言えば、それは違う・・・理緒が一番苦しんでいる時に-具体的に言えば自殺を考えていた時に-理緒の心を救い、理緒を自殺と言う最悪の選択から救いました。
この辺りは物語的にも百合的にもぐっと来るシーンなのですが、本作はこの”心”の動きや描写が本当に上手く、他のシーンも強く印象付けられます。
例えば朱理は言動が幼く見える面が有り(実際は全く違いますが)、それによってどうも家族や友達から軽く見られている節が有ります。それは決して軽蔑的な物では無いのですが・・・まともに取り合って貰えないというこの”小さな失望の積み重ね”がいかに当人にとって辛い物であるのか、というのが良く伝わって来ます。
またそうした朱理の心情が亡くなった祖母や物語の魔女”ノゾミ”との対話であるという点が秀逸。これは子供の空想やごっこ遊びのように見えますが、朱理の行うそれは自問自答であり一種の禅に近い物のように思います。
これは物語として面白くなっているのは勿論、朱理の思慮深さの源泉だと思うと彼女の言動にも説得力が有り、その点でも唸らされました。
理緒が自殺を考えるほど追い詰められている事もあり、イチャコラするようなシーンは有りません。(作品のコンセプト的にも違いますしね 汗)
ですが、お互いに辛い点を埋め合うような関係である・・・特に理緒は朱理に最初から救われている事もあり、序盤から好感度はMAXと言える状態でそこは心地良いです。
また訪問者様から”理緒が朱理へ抱いている気持ちは恋愛感情だと読み取れる箇所もあり”との情報が有りましたが、短いながら確かにそうしたシーンは有りました!
残念ながら朱理の思慮深さはそうした恋愛方面には発揮されておらず理緒の気持ちには気付いていないようですが (朱理の鈍感とも言える反応に理緒が呆れるような描写が有ります)、ラストが明るい事もあり、二人の将来が楽しみになる展開なのは好印象でした。
内容的に少女が少女の心を救うお話という事で百合的に良かったのは勿論ですが、純粋にお話としても非常に良かったのが素晴らしかったです。
特に-繰り返しになりますが-心について深く掘り下げられているのが良かったです。些細な事のように思えても当人がいかに傷付いているか・・・例え肉体的には傷付けられてなくても理緒のように心が擦り切れ疲れ果ててしまえば自らの命を断とうすら思ってしまう。
逆に勇気持って踏み出せば現状が変わる、変えられるという展開とそうするまでの心の動き-作中では狼というありとあらゆる災いとの戦いになぞらえてある-は大人になっている管理人でも勇気づけられる物が有りました。
特に暴力のような力だけが狼との戦いに必要という訳では無いという結論=何らかの行動を個々人が起こせば、少しずつでも状況は良くなっていくというのは個人的には好印象でした。
テーマ自体は重く色々と考えさせられる作品ですが、理緒と朱理の二人の将来自体は明るく感じられるラストで終わりますし、百合的にも明るく感じられる内容なのも◎。
勿論、描写が盛り沢山という訳では無いので本当に恋情かは分かりませんが・・・もし理緒の想いが恋情であるならば、個人的にはまたこの二人が主人公で今度はLGBTQをテーマにした作品と言うのも読み応えのある物になる気がしますね。
最後に余談ですが、朱理の愛読書であり魔女”ノゾミ”が主人公として活躍する「魔法使いのアルペジオ」が普通に面白そうなので本当に本として出して欲しいな、とも思います。
ボーイッシュ魔女が悪魔を封じたギターを持って冒険&人助け・・・ってかなり興味を引かれるんですけど・・・これ、管理人だけですかね?
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