![]() | 百合要素の傾向 | 親愛 |
---|---|---|
全体的な傾向 | シリアス、伝奇 | |
著者 | 廣嶋玲子 | |
刊行巻数 | 全1巻 | |
公式サイト | 狐霊の檻 (サニーサイドブックス 日本編) : 廣嶋玲子,マタジロウ – 小峰書店 | |
関連サイト | ||
備考 | 記事執筆時点&管理人が把握している範囲では電子書籍化はされておらず |
「狐霊の檻」Amazonサンプルページ(表紙、裏表紙)より
ビジュアル的な要素はほぼこの2枚のイラストのみですが・・・人ならざるが故の独特の雰囲気を醸し出す”あぐりこ”といかにも普通の娘といった”千代”との対比が印象的です
私利私欲のために阿豪家に囚われた狐霊”あぐりこ”とそんな彼女の世話役にされつつも、あぐりこを救出すべく奮闘する少女:千代との交流が唯一にして最大の百合的な見所。
最初は千代を阿豪家の回し者と邪険にしていたあぐりこが千代をじょじょに受け入れていく様、そしてそんなあぐりこに惹かれていく千代の様は非常に良いです。
ストレートに分かり易いイチャイチャといった要素は無いですが、止む得ない理由から千代を遠ざけようとしたあぐりこに”やはり大好きだ。そばからはなれたくない。”と千代が食い下がるシーンや千代を助けるために自らの命と同じくらいに大切にしていた”もの”を犠牲にしてもなお「千代を助けられて良かった」と笑うあぐりこのシーンは、それまでの展開の秀逸さも相まって非常に素晴らしい物が有りました。
お話自体について 王道な展開を上質に突き詰めつつ考えさせられる要素もある素晴らしい作品
”閉じ込められた人外の者とそれを鎮める役割を負った不幸な人間”というテーマやそういった者達の交流というのは伝奇要素のある作品では普遍的なテーマであり、目新しさや斬新さは無いものの王道故の良さとテンポ良く進む展開と文章の上手さによって物足りなさは全く感じさせません。
また敵役として登場する”阿豪平八郎”という人物は怒りっぽく小心者であり、敵役ゆえに良い印象は無いものの良い意味で児童文学らしい教訓を感じさせるキャラとなっているのが印象的。
と言うのも、彼は幼い頃は私欲のためにあぐりこを阿豪家に閉じ込めている事を可哀想だと感じ親に意見した事があること。心底ではないものの千代を暴力的に扱う事を避けようとしたりとした優しさを見せたこと、など元々の気性はどちらかと言えば優しい人物だったと伺えるから。
最終的にはあぐりこと千代を阿豪家のため=私欲のために捕らえようとする(あぐりこの呪いによって阿豪家の人間の多くが病死したせいも有りますが)ため、その優しさは偽りだったと言うのは簡単です。
が、父や兄といった周囲の人間の理屈や圧力に流されてあぐりこと千代に高圧的、暴力的な言動を取っていくようになっていった事を考えると自らがそうなっていないと言い切る・・・現実に当てはめれば会社や学校という”組織”、親や友達(世間と言っても良いかもしれません)の都合や言動によって、人への接し方が左右されていない、と言い切れる人は意外に少ないのでは無いかと思います。
あぐりこと千代の辛い境遇とそこからの逃避行というエンターテインメント的な面白さは勿論ですが、こうした教訓的な要素をさり気無く混ぜてあるのが、本作のまた面白い所だと思います。
注意点について 内容的には特に無いが、記事執筆時点では電子書籍版が無いなどの点は有り
内容については個人的には注意点らしい注意点は無い素晴らしい作品でした。ただ記事執筆時点では電子書籍版が見当たらず、購読の選択肢が狭い事が注意点と言えば注意点でしょうか。
内容が良いだけに電子書籍派の方に取っては悩ましい点かも知れません。
また挿絵が無いため、小説作品でもそうしたビジュアル要素は欲しいという方にはその辺りがちょっと物足りないかも、ですね。
結論について 親愛の百合という括りならば個人的にはトップクラスに勧めたい
直球なイチャイチャや恋愛的な方向性とは言い難いものの、あぐりこと千代の結び付きは非常に強烈で親愛的な百合という括りでは個人的にはトップクラスと言える作品。
それに直球なイチャイチャは無いとしたものの、脱出計画を隠す一環としてあぐりこが千代に傷を付ける・・・肌蹴た肩に牙を立てるシーンなどは情景を想像すると・・・ね、デヘヘ
(o ̄∇ ̄)=◯)`ν゜)・;’
・・・冗談はともかく。王道的な良さを突き詰めた良作と言え、児童文学という事もあって幅広い方にお勧めできる素晴らしい作品の一つと言えるかと!
当サイトの関連リンク


コメント