訪問者様より情報を頂いた「マチルダは小さな大天才」を読んで見たので話題に。
訪問者様から”互いに最高の理解者同士である生徒と担任教師”と教えて頂いた本作ですが、その情報通り小さな大天才であるマチルダとその担任となった教師ミス・ハニーとの関係性が百合的な見所。
マチルダはその年齢に対して早熟な知能の発達-様々な本を読み、掛け算を解く-をしているにも関わらず両親からは軽んじられていましたが、そんな彼女を初めて積極的に理解しようとしたのが担任教師となったミス・ハニー。
この2人の出会い・・・と言うよりマチルダの能力に魅入られたミス・ハニーの姿は中々に印象的で、大げさな表現や言動は無かったものの、初授業で大勢の他の生徒が居るにも関わらずマチルダに惹きつけられていると感じられるのは見方によってはかなり百合好きの心をくすぐる物が有ります。
また実際にミス・ハニーはマチルダの将来のために尽力・・・校長であるミス・トランチブル、マチルダの両親にマチルダを飛び級させるよう嘆願しに行きます。
マチルダには序盤に大人の理解者として図書館司書ミセス・フェルプスが居ましたが、彼女は図書館の客人としてマチルダを扱いはしましたが、マチルダの境遇-幼い子供が一人で図書館に来ている-を訝しみつつも具体的な行動は起こしませんでした。
勿論、だからと言ってミセス・フェルプスが悪い訳では無いですが・・・こうした前振りがあるお蔭で担任という立場があるものの即座に行動に移したミス・ハニーが更に印象的に映りますね。
とは言え、ミス・ハニーのこの嘆願は結局受け入れられる事は無いのですが・・・しかし、どちらかと言えば内向的なミス・ハニーが一人の女の子のために精一杯に頑張った姿は素晴らしく、美味しいです。
上述したミス・ハニーの頑張りは実らなかったものの、マチルダとミス・ハニーの仲は急速に深まります。
そうした仲でミス・ハニーはマチルダに自分の過去とその辛さを語る事に。これは一人で頑張って来た大人の女性が小さな女の子だけに悩みを明かすという事であり、この辺りも見方によってはかなり百合的に美味しいですね。
で、そのミス・ハニーの過去ですが、叔母に虐められて財産(家など)さえ奪われているという壮絶なものである事に加えて、その叔母とは校長であるミス・トランチブルと、かなり驚かされます。
これを聴いたマチルダはミス・ハニーのためにその頭脳とこの話をする少し前に突然発現した超能力(物を動かす、俗に言うサイコキネシス)でもって、ミス・トランチブルに一計を仕掛け、見事に町から追い出す事に成功。
家を始めとした財産を取り戻す事に成功したミス・ハニーはこれがマチルダのお蔭だと分かっていて、マチルダを抱きしめて頬にキスするシーンも。
うん、もうこれ百合漫画だったら年の差結婚間違い無しです!(爆)
(o ̄∇ ̄)=◯)`ν゜)・;'
スミマセン・・・。と冗談はともかく、マチルダの両親と兄は父が犯罪に関わっている事が露見し夜逃げ。その際にミス・ハニーがマチルダを引き取る事に了解を得ていたためにマチルダはミス・ハニーの元で暮らす事が出来る=ハッピーエンドとなります。
そう、真面目にミス・ハニーとマチルダが家族となる事で物語は〆という素敵な結末を迎えます。
現代日本人の目で見ると独特な部分やちょっと引っ掛かる部分も感じられたが、情報通り非常に良い作品
百合要素は上述しましたが、お話として見ると海外作品である事や刊行年がやや古いせいか、現代日本人=管理人の目で見ると独特に感じられる部分も。
例えば作中では”狂人”とすら評されたミス・トランチブルですが、本当に気違いなのではないかと思うような言動を取っており、そんな人物が何故校長になれたのかと思えます。(まぁこれは作中でも言及されていたと思いますが)
特にフィクションという事で誇張された表現ではあるものの、女子生徒の三つ編みが気に入らないと言って髪を持ってぶん投げたり、男子生徒に自分のケーキを盗み食いされた報復に大量のケーキを無理に食べさせて音を上げさせようとし、いざそれが完食されるとケーキが乗っていた大皿を頭にぶつけたり・・・。
そうした暴力行為を差し引いても生徒や他の先生に対して(勿論、ミス・ハニーに対しても)罵詈雑言を浴びせており、正直読むに堪えないレベルの言葉を登場の度に発します。
マチルダの両親にしても「女性が勉強なんても仕方ない」といった考え・・・「女性はブックス(勉学)よりもルックス(美貌)」といった考えであり、現代の視線で見ると-刊行年を考えるとある意味で当然ながら-時代錯誤な感が凄いです。
そのためかマチルダや他の学校生徒もこうした大人達との歩み寄りは無く、苛烈な仕返しで対抗しています。例えばマチルダは自分を罵った父に対して帽子に接着剤を仕込んで頭と帽子を貼り付けたり、学校のある生徒はミス・トランチブルの水差しにヤモリを仕込んだりといった具合に。
こうした展開は爽快感があるとも言えますが、歩み寄りが全く無い完全な敵対関係とも言える訳で、子供がそうした環境に居ると思うと-マチルダ達のたくましさに救われている部分は有りますが-やるせない気にもなります。
またミス・トランチブルやマチルダの両親は犯罪行為に手を染めていた事が示唆されますが、それが正式に裁かれる描写や展開が無い事もややモヤモヤした気持ちになりますね。まぁこの辺りは好みの問題では有りますが・・・。
とは言え、後書きを読むとミス・トランチブルなどの人物像は作者が意図的に書いていた・・・大人の身勝手さや当時の子供を取り巻く学校などの環境問題に対してのメッセージだと思うと納得。
そうした点を踏まえて見れば横暴な大人に屈さず、更に大人で自分の理解者たる女性:ミス・ハニーを救ったマチルダの活躍は純粋な物語としては勿論、百合好きとしても魅力的な物が有ります。
ミス・トランチブルの言動や独特の認識(パンに塗るのがジャムでは無くマーガリンをだと貧乏だという認識など)など、個人的には独特に感じた作風が大丈夫なら百合妄想を刺激してくれる良作だと思いますね!