以前に訪問者様より情報を頂いた小説「うらんぼんの夜」を読んで見ましたので話題に。
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訪問者様より百合要素ありの小説として「うらんぼんの夜」を教えて頂きました!公式ページ
まず公式サイトでのあらすじを掲載すると
片田舎での暮らしを厭う高校生の奈緒は、東京から越して来た亜矢子と親しくなる。しかし、それを境に村の空気は一変し、亜矢子の口数も少なくなる。疑念を抱く奈緒は、密かに彼女の自宅に忍び込もうとするが……。書き下ろしミステリー。
なっており、以前に頂いた情報通り村での過去から続く地蔵を祀る因習とそういった世界(村)に飛び込んで来た亜矢子という”異物”を絡めた伝奇的ミステリーとなっています。
で、肝心な百合要素ですが個人的には割と控えめ-質的な意味はともかくとして-という印象でした。理由としては主人公:奈緒と転校生である亜矢子が話の”中心人物”である事は確かなのですが、話の中心は村に祀られた地蔵の因習と菜緒の視点からは不可解に見える村人の言動であるため、分かり易く奈緒と亜矢子が絡むシーンは少ないです(勿論、友達として交流を深めるシーンは有りますが)。
では百合的に楽しめないかと言えば、それも否。と言うのも奈緒と亜矢子の関係性は終盤で劇的な変化を遂げるから。
この点にしても恋愛的なニュアンスでは有りませんし、分かり易いイチャイチャは有りません。その時の奈緒を言動を見るとむしろ関係性は悪化したという見方すら出来ます。
が、亜矢子は奈緒を失いたくは無いが故に自らの秘密を全て奈緒に打ち明け、その秘密故に奈緒は亜矢子を意識し続けねばなりません。
また奈緒は亜矢子に対して”ずっと望んでいた親友というものではなく、もっと粘土のある生々しい何かだ。”、”怒りや悔しさに翻弄されているのに、なぜか亜矢子への愛おしさが一向に消えてなくならない”という感情を抱いており、亜矢子に良い感情を持てなくなっている一方で愛しさを抱いているという歪な心情に陥っています。
この終盤の歪な関係性、心情にどこまで”百合”を見出すか。百合的にはそこで好みが分かれそうな作品だと思います。ちなみに亜矢子の”秘密”や二人の関係性に男性キャラが絡む事は無いので、そういった点を気にする方は安心して良いと思います。
ミステリー作品であるが故に詳しく書くとネタバレ=興醒めなので難しい所ですが(苦笑)、序盤~中盤まで奈緒の視点から田舎の悪いところ が詳しく描写・・・これは以前に訪問者様から頂いた情報通り
田舎の嫌な部分をドロドロに煮詰めた生々しい描写
村の老人達が崇める奇妙で不気味な地蔵やその因習が物語の根幹に関わってくるなど伝奇的な部分
男尊女卑の酷い田舎で虐げられてきた女性達の強い恨みや怨念といったホラーとジェンダーを絡めた要素
といった要素・・・特に田舎の嫌な部分は”川のせせらぎなんて良い音は聞こえなくて、聞こえるのはカエルの声ばかり”といった情景描写から差別的とすら言える閉鎖的な人間性-村外から来た物は例え嫁でもよそ者扱いなど-が詳しく描写され、それに反発し村に移住してきたよそ者である亜矢子たち一家に肩入れする奈緒に共感する人は多いでしょう。
そうした村=悪みたいな見方をしている所へ亜矢子の秘密が絡まった時、一気にこれまでの地蔵への不気味と言える信仰を元にした村人の不可解な言動の謎、そしてそれまでの村への見方ががらっと変わる展開は非常に秀逸。
百合要素としては上述したように、やや控えめに感じる部分があったもののこうしたお話の部分も非常に面白かった事もあって不足感は無かったですね。
唯一気になる点として村の地蔵信仰に絡んだ要素として非常にオカルト的な要素が登場してくるのですが、それが何だかんだ言って現実的な理屈で展開してきた物語の中にあって浮いている印象は有ります。
果たして”それ”は具体的には何だったのか。また”それ”が最終的にどうなっていくのかは明確には描写されておらず、そこがちょっとだけ消化不良な感じを受けました。
とは言え、亜矢子の秘密という物語の軸、奈緒と亜矢子の関係という百合的な要素に関しては一つの決着が付いている事や控えめに感じつつも質的には濃い百合を感じさせる終盤の奈緒と亜矢子の関係性には充分に満足。
基本的にはミステリー作品なので、ミステリ要素を主に楽しみつつ百合要素も楽しめれば・・・という姿勢で読むのではあればお勧めしたい作品です。
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